医師の求人掲載の成功は自院の強みがポイント|応募が集まる強みの見つけ方
2023.01.11
以前から医師不足とよく耳にしますが、2022年5月の医師の有効求人倍率は4.46倍でした。(職業安定業務統計)
これは、1人の医師を4〜5件の病院が奪い合っている状況であり、現在も医師の採用難は続いているということになります。
医師の場合、採用・勤続が病院の経営にも影響します。
そのため、医師を募集している採用担当者さんは頭を悩ませているのではないでしょうか?
今回は、医師採用のポイントを解説していきます。
この記事の目次
医師の採用が困難である理由
先にも述べたように、2022年5月の医師の有効求人倍率は4.46倍と、完全な売り手市場となっています。
1人の医師を4つの病院で奪い合っている状況ですので、医師の採用がいかに困難であることがお分かりいただけるでしょう。
給料や休日設定、福利厚生だけを伝える求人広告では、医師の採用を成功させることは非常に難しい状況です。
慢性的な医師不足の原因は、医局制度の崩壊にあるといわれています。
医局制度の崩壊
以前は医学部を卒業した学生は大学病院の医局へ属し、医師としてスタートするのが慣例でした。
しかし、平成16年に開始された新臨床研修制度により、医学部を卒業した学生は研修先を自由に選べるように変更となっています。
その影響で医学部卒業後、賃金が安く労働条件が厳しい大学病院より、条件や立地の良い病院に求職者が流れるようになりました。
これが医局制度の崩壊です。
医学生が自分の意思で就職先を選べるようになったことにより、医局に残る若手医師が以前と比較して減少傾向にあります。
そのため、地方の中小病院や公立病院に医師を派遣できなくなっているのです。
医局制度の崩壊により、給料など待遇が良い症例経験を積める病院だけに医師が集まり、それ以外の病院では医師が不足するという状況が続いています。
しかしながら、医局制度の崩壊はデメリットだけではありません。
医学生が自身の就職先を自由に選べるいうことは、医学生や若手医師にとって魅力的な院内環境作りに取り組めば、求める人材を確保できるということでもあります。
医局制度の崩壊は、逆にチャンスだととらえて採用活動を行いましょう。
医師の転職理由4点
医師が転職を決意するときの職場への不満を解消することで、採用活動を有利に進めることができます。
医師転職ドットコムを運営する株式会社メディウェルでは、社内の医師の転職実績データをもとに、医師の転職理由について調査を行ないました。
①「家庭事情(転居・育児・介護など)」
②「大学病院・医局を辞める・離れる」
③「人間関係の不満を解消したい」
④「加齢による勤務内容の変更」
が上位にランクインし、全体の転職理由の6割以上を占めています。
医師が抱えるこれらの現状に対する不満について、自院では解消できるかどうかを考えていきましょう。
確実に医師を採用できる求人広告の作成ポイント
ここまでに述べているように、医師の採用は非常に難しい現状です。
しかし転職を考えている医師は多くいるのですから、転職を検討している医師にとって、自院が魅力的な病院であることを、求人広告でしっかりとPRすることが重要です。
自院の特徴や強みを、求人広告で訴求していく必要があります。
ここからは医師を確実に採用するための求人広告の作成の方法を具体的にお伝えします。
1、医師の転職理由を踏まえて自院の強みを抽出する
医師の転職理由は先ほど述べた通りです。
家庭の事情や人間関係の不満、勤務時間を減らしたいという希望を踏まえたうえで、自院が訴求できるポイントを探し、求人広告の作成に活かします。
自院には特に強みがない、平凡だ、よそと比べて特徴がないと考える採用担当者もいます。
しかし、特徴や強みがない病院はありません。
以下に強み抽出の例を紹介します。
【家庭の事情や加齢によって転職を考える医師に対して訴求できる強み例】
・療養型病院なので、救急対応や急変が少ない
・子育て中の医師でも働けるよう、外来診療担当だけでも良い
・時短勤務制度がある
・検査・手術が少ないので身体的負担が少ない
・当直/日直は院内の在籍医師全員でローテーションするので、月に1~2回程度
・当直明けは休日取得可能
【人間関係の不満を解消したい医師に対して訴求できる強み例】
・仕事量は全員で平等に分担するようにしている
・医師の人数が多くはないので、定期的に医師全員でのミーティングを開催し、科にとらわれない開放的な雰囲気を目指している
・常勤医師は1人なので、自分の裁量で診療できる
【やりがいを求める医師に対して訴求できる強み例】
・若手医師が少ないので、手術・検査症例を数多く経験できる
・大学病院のように医師の人数が多くないので、外来から病棟受け持ちまでひとりでしっかり担当できる
・30~40代の中堅医師が少ないので、若手育成ポジションに就ける
・研究に対する協力体制が整っている
・医師の人数が少ないので、重要なポジションに就ける
・亜急性期も学べる
・リハビリ専門、不妊治療専門など特化した強みがある
・実力や実績をきちんと評価される環境である
これは一例となりますが、参考にして強みを見つけてみてください。
一見して「弱み」とも思える部分が強みだったりもするものです。
縦横のつながりが大きい医師の世界ですので、院長や現在在籍している医師の出身大学をHPに記載するのもひとつの方法です。
同じ大学の卒業生ならばと、転職候補として検討する医師もいます。
2、在職中の医師に自院の強みを聞いてみる
自院の強みとなる点を、在籍している医師に調査してみるのも良いでしょう。
いくつかの病院で勤務してきた医師ならば、他院と比べた自院の強みや特徴を感じているはずです。
また転職を検討した際に、どのような点を魅力に感じて自院に決めたのかも聞いてみると良いでしょう。
医師に自院の強みについて尋ねる際には、アンケートではなく、直接尋ねてみることをおすすめします。
多忙な医師ですから、アンケート調査では回答は集まりにくい傾向があります。
エレベーターや階段ですれ違った際や用事があって医局を訪れた際など、雑談程度で軽く尋ねてみましょう。
また院長に協力を仰いで、在籍医師たちの声を集めるのも良いでしょう。
院内で忙しく働いている医師ですので、アンケート結果を集めようとしても、すぐには集まりせん。
常日頃から、医師と適切なコミュニケーションを取っておくことが大切です。
また改善点を指摘された際には、「貴重な医師の生の声」と捉えて、できる範囲で反映できるように努めましょう。
医師が働きやすい、他の医師に紹介したいと思う院内作りも大切です。
3、どのような医師を採用したいのかを考えてみる
とにかく医師免許があればいい、○○科の医師であればいい、という誰でも良いから来てほしいという求人では、誰の目にも留まらない求人広告となってしまいます。
・若くてやる気のある医師に来てほしいのか
・働く時間は融通を効かせることができるので、長く働いてくれる医師を多数採用したいのか
・専門領域に強い医師に来てほしいのか
・即戦力となる医師が欲しいのか
・経験が満たない点があっても育成する力があるので、長く働いてほしいのか
今、自院にとってどのような人材の医師を必要しているのかを明確にしておくことで、より医師に対して訴求できる求人広告を作成することができます。
3、強みを反映させながら求人広告を作成する
自院の強みがある程度把握できたら、実際に求人広告を作成しましょう。
採用したいと考えている医師に目が留まるような、自院の強みを記載しましょう。
【例】
若手のやる気のある医師を採用したいなら
検査数は○件と大学病院と比べると少ないですが、20代後半~30代前半の医師は少なく、希望があればどんどん検査、手術件数を積んでいただくことができます。
当院の○○科長も「当院ではたくさんの経験を積むことができる。やる気のある医師ならば、どんどん検査、手術を任せたいと考えている」と考えています。
【例】
時間は融通できるので、長い期間働いてほしい医師を採用したいなら
・当面の間は週に2回、新患患者担当の外来勤務をお願いいたします。ご家庭の都合がつくようになりましたら、フルタイムでの勤務もご検討ください。
・当院の健診科にて、検査業務をお願いいたします。時短勤務も構いませんが、長く勤務していただける方を優遇します。
・時短勤務、オンコール無しの対応も可能ですが、長く勤務していただける方を採用したいと考えています。
【例】
専門領域に強い医師を採用したいなら
・当院では今後、○○科に力を入れていく予定です。ぜひ○○科の専門領域に強い医師を採用したいと考えています。
新規立ち上げとなりますので、年齢や経験を考慮して、責任者ポジションをお任せしたいと考えております。
・当院の○○科では手術件数が年間○件です。大学病院と比較すると少ない件数ですが、医師の数が少ないため、たくさんの症例を経験していただけます。
経験や年齢を考慮して、責任あるポジションもお任せいたします。
【例】
経験は多少少なくても良いので、長く働いてくれる医師を採用したい
・当院は中規模病院で、在籍医師の平均年齢は40代半ばとやや高めの病院です。
ベテラン医師が多い病院ですので丁寧な指導体制が整っております。
中規模病院ならではで、診療科の垣根は低く、協力体制も整っております。
総合的な診療を行いたい先生方の応募をお待ちしております。
弱みとも思える部分が、実は強みだったりもします。
自院には強みはないと考えず、在籍している医師の力も借りながら、採用したい医師が「ここで働きたい!」と思える求人広告を作成しましょう。
まとめ
医師の求人ではやりがいや病院の特色を明確に伝えることが効果的です。
自院の強みを効果的に貴院をアピールしていきましょう。
弱みの中に強みがあります。
どの病院にも強みはありますから、探してみてください。